子どもたちに感動を

大阪朝刊 2025/03/12(水)

4月に開幕する大阪・関西万博に出展するクウェート、ウズベキスタン、タイの海外パビリオン3館の設計を担当した1級建築士。「相手国のやりたいことを忠実に期待以上に表現できるように意識し次世代の子どもたちにはリアルな建物を見て感動してもらいたい」と話す。海外パビリオンは新型コロナウイルス禍で1年ずれ込ん2021年開催となったドバイ万博の影響や、物価高騰など予算制約に伴う計画の変更などで着工の遅れが目立った。25年春、クウェート側から「徳岡さんが引き受けてくれなかったら万博の出展はやめる」と打診があり、承諾した。曲線を多用して翼を広げデザインが難しく、引き受け手がなかなか見つからなかったのだという。

各国のやりたいこと表現

万博で海外3パビリオン設計 徳岡浩二さん (63)

とくおかこうじ 1級建築士。1961年大阪市生まれ、京都工芸繊維大院修了。 徳岡設計社長、府建築士会副会長。2021年に黄綬褒章受章。

ウズベキスタンのパビリオンでは、高さ6~8の日本の杉約300本を使う。 府木材連合会などと万博に関する情報交換会の座長を務め、培ったネットワークを生かして大阪や宮崎、熊本など9府県から杉の調達や加工にも関わった。世界の医療ハブ(拠点)をテーマにしたタイのパビリオンも設計した。


「万博は3世代で携わっているので、ある意味使命」。祖父の丑之助さんは1970年の大阪万博のシンボル「太陽の塔」の製作に大工の頭として携わった。 小学生だった徳岡さんは設計図面で塔の不整形さを見て「真っすぐにしたらいかんの?」と口にすると、「岡本太郎) 先生の言うとおりに造るのが、おじいちゃん の仕事なんや」と笑顔で返されたという。父の昌克さんも1級建築士で、大阪万博で間洗濯機の話題を集めた「サンヨー館」などを設計した。府建築士会が24年3月に発行した「住み続ける家づくりガイドブック」(建築資料研究社)では編集委員長を務めた。廊下や台所、浴室など場所ごとに安全に関する法律や、転倒防止といった安全確認のポイントを分かりやすく取り上げ、熱中症の被害者の半数以上を65歳以上が占めるデータも交えた。「人を守る住宅で人を傷付けてはいけない。 家を建てようとしている人にも読んでもらいたい」ガイドブックは24年元日に発生した能登半島地震にも触れた。「能登では23年に震度6強の大きな地震が発生した。人の健康診断と同じように、大きな地震が起きたら耐震診断する仕組みが必要」と指摘する。建築士の魅力について 「モノを造ってお金ももらえて社会にも貢献できる。 次のモチベーションにつながっており、寝る前にデザインのことを考えていると気持ち良く眠れます」と語る。【新宮達】