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『フォレスタふじ』が「2009JIA現代日本の建築家」に掲載されました
コンセプト:
佐賀市立富士生涯学習センター「フォレスタふじ」は、古くから湯治場として親しまれてきた古湯の町の中心に位置し、佐賀市立図書館富士分館・多目的ホール・温泉施設を備えた生涯学習施設である。富士町の古湯温泉は、多くの文人たちの「曾遊の地」といわれ、人々はその文化的な刺激溢れる環境で生まれ育ち、時代と共に文化を育んできた。情緒と活気あふれる古き良きまちなみの姿を想い起こさせる共用部を『曾遊の道空間』と重ね合わせ、諸室が有機的に連続して、来館者相互の交流を促すよう計画した。木の香りに包まれたぬくもりのある場を目指し、格子天井や床は地場産のスギを活かした構成とした。温泉街のまちづくり指針となるよう、素材・色彩に配慮した外観は、植栽計画とあわせて心温まる山里の景観づくりに貢献している。ござに寝転がり映画を楽しめることで有名な「古湯映画祭」の会場としても毎年利用され、全国から多くの映画ファンが訪れ、賑わいを見せている。
建築士と建築士会がなすべきこと―No.1
2010.3 建築人 No.549 建築士の行方 ―これからの課題と展望―
「建築士と建築士会がなすべきこと」
◇低成長・縮小経済に生きる知恵
前世代も含めて現代の日本を生きる我々は、右肩上がりの経済状況しか知らない。低成長ならまだしも縮小経済に対処する経験がない、というよりそれに対する想像力、創造力が欠如しているのが問題で、さらに悪いことに世界の現代史や政治経済に関する学習が不足していて近未来への回答を見出せないようだ。不況という言葉を数年来、毎日のように耳にしてきたが、そのうち好況になると考えるのは空虚な幻想であり、国力を考えればこんなものではないかと思えてならない。わが国の建設業界は一部企業を除き、高度経済成長と戦争特需をはじめとする輸出による貿易黒字の恩恵を国内で享受し、甘やかされて育ってきたが、大きな過渡期を迎えている。その主因は少子高齢化にともなう社会的な老化にある。人間の高齢化の性状は、右肩下がりに回復と停滞の波を描きながら身体能力が徐々に低下し死を迎える。沈滞する日本社会も同じように波を描きながら好不況に一喜一優するが、遠めで見るとはっきりと、成熟ではなく老いと衰弱に向かっているのが判る。しかし一国が社会的に老化しても地球全体で見ると局地的現象に過ぎず、島国日本が国際状況を体現しているわけではなく、確かなことは資源と食料を自給できない国が、豊かなはずは無いということだ。マスコミの論調は、他国を批判することで国内的に精神的安定をかろうじて保っているようにも感じられる。
◇建築界の混迷の主因
わが国における建築士の平均年齢はほぼ60歳に達しており、情報化社会における実務の第一線で働く30から40歳代は35%に過ぎない。しかも失われた10数年といわれる環境の中、若手世代には実績が少なく、短時間で完結させる能力や責任感が充分に身についていない。一方大半を占める50歳以上の建築士は、利権を確保して生活を守るために、建築士の新規登録を絞り、設計者選定も実績重視とし、国が借金までして見通しのない将来の仕事までやり尽くしてきた。情報公開もプロポーザルもすべて経験年数や実績が重視されていて、コンペはほとんど無く、少数派の若い世代にとって希望を見出せない状況となっている。建築士だけでなく会計士など他の資格も同様に労働人口バランスに偏りがあり、資格取得に関する世代間不公平は著しい。新しい領域を切り開くには若い力が不可欠なのだが、この既得権社会と自己中心的な利益誘導、そして自己浄化力のない業界体質が、建築の魅力や誇りを傷つけ、多くの優秀な人材が他業界、他国へと追いやり、生産能力を低下させた。また経験と技術によって業界の基盤を支えてきた職人たちも高齢化し、もはや余力はわずかとなっている。将来を考え優れた人材を活かすために、公正公平な視点を持って均衡の取れた人材育成と新陳代謝を進めることが不可欠である。

建築士と建築士会がなすべきこと―No.2
2010.3 建築人 No.549 建築士の行方 ―これからの課題と展望―
「建築士と建築士会がなすべきこと」
◇都市づくりのビジョンを導く規制緩和
建築を永く使い続けることは大切だが、日本中を埋め尽くしている多くの建物は、規格化や分業化で作られた大量生産によるものがほとんどであり、これらの資産が文化的にも芸術的にも後世に引き継いでいくべき、優れた価値を有しているといえるだろうか。建築士に、これではいけないという気概が感じられず、理想を目指して創造的に取り組む姿勢や、こんな都市を創りたいというビジョンを示そうともしないのが残念だ。戦後、既得権社会で分捕り合戦を経て繰り返し配分されてきた糧も年々先細っている。国勢維持が可能な残り数年間が、目を覚ますべきラストチャンスではないかと思う。
建築士は、開発と更新がなければ持続的に技術力を維持してはいけない。建築を改修して使い続けることは重要だが、それだけでは人も技術も育たない。せっかく構造が見直されたのだから意匠・設備も早急に意識改革し、継続的に時代遅れの建物を芸術性・文化性が高く長寿命で環境負荷の少ない社会資産として更新していくことが必要であり、遅くなるほど解体廃棄にかかる負担も大きくなるであろう。沈滞する経済を打開するためには我国の特徴を活かす知恵が必要である。車社会の新興国に比較して我国は、都市基盤が整備されていて効率が良く、移動コストや環境負荷が少ないわりに容積率は低い。省エネ・省資源の取り組みによって余力も生まれていることから、交通利便性の高い都市部の容積率を大幅に見直して高度利用を促し、芸術・文化を動機とした社会ストックの更新を進める一方、団地再生を促し、郊外は自然と共生できる田園風景を回復させて、メリハリのある土地利用により美しい景観を誘導しながら活性化させることが可能である。国際競争力強化のためにも都市モビリティを考慮した開発は不可欠であり、規制強化の一方に緩和が無ければ経済が失速するのは当然である。容積緩和は再開発特区や総合設計制度の拡充でも対応できる。さらに省エネ建築や、文化・福祉施設に対するインセンティブを与えるなど現行法規の中でも実現可能な方策は見出せるはずである。
◇将来を担う良き遺伝子を残す使命
建築設計とは本来、未来を描く想像的な仕事であり、過去の事例を参照して繰り返すことは縮小再生産を招く自殺行為であるのに、高度成長時代の遺物として建築界の常道となってしまったことが発展を大いに妨げてきた。この世に生を受けたものが良き遺伝子を後世に残していくことは使命であり、それは建築も同じである。官民一体となって「公の利益」を考え、質の高い建築・都市を創るために相応しい方策を実現することが重要である。建築士制度も社会状況に応じて身の丈にあった整備をする必要があり、1級、2級建築士の一元化と木造建築の再評価、資格創設に伴う救済措置の役割を終えた木造建築士の段階的廃止、各団体のCPD制度の共通化、資格試験・登録事務の効率化、業界団体の機能的統合、賠償保健への強制加入など、他人任せではなく建築士自らが提案していかねばならない。また行政も時代にふさわしい建築関連法規の再構築するため、阪神大震災の教訓を活かし、構造計算偽装事件の抜本的再発防止策に着手し、税による良質な建築生産の誘導、実状にあった用途地域の見直し、市街化調整区域における国土利用方針の明確化、減築・再築時代に合わない抑制的な開発許可申請の簡略化、都市計画道路の迅速な整備、指名願いなど登録事務の合理化などに「時は金なり」という感覚を持って積極的に取り組んでいただきたい。建築界にとって中国の10倍以上といわれる高コスト体質も大きな課題である。競争力のある生産性を維持するため、企画から許認可、設計監理、資材調達から施工までを含めた総合コストの視点を持って縮減することが重要である。憲法を含め法律を運用で済ませるのはもはや限界であり、システムの改善が不可欠である。変革に向けて国依存、景気まかせでない自律的回復への道筋を、複合的、総合的に見出して未来を切り拓いていかねばならない。

『玉川学園幼稚園』が『建築と社会』に掲載されました

玉川学園幼稚園 大阪府
2009.11建築と社会 第16回会員作品特集”私の空間作法” / 藤城義丈
800人の園児を持つ幼稚園に於ける、西側公園の緑と東側運動場の桜が一体となり連なるような、開放性をもったホールづくりである。専門的な体操設備とコーチ陣を配する体育施設として、また発表や講演、式典といった園児をはじめ、先生方、父兄にとっても多様な利用を可能とするため、さや屋根やLow-eペアガラス等を利用しながら快適な大空間を実現している。
子供たちは毎日の活動を通じて桜、新緑、紅葉、落葉といった季節の変化を感じながら成長している。
ニューヨークにおける環境デザイン
建築人 No.544 2009.10
ニューヨークにおける環境デザイン / 海部 哲
今春ニューヨークを訪れた。マンハッタンには、様々な時代を代表する建築が競い合うように混在しているが、最新のプロジェクトについて感想も含め報告したい。
エンパイアステートビルから眺めるミッドタウンの夜景に、ひときわ輝きを見せるのは≪ニューヨークタイムズビル≫である。2000年にコンペで選ばれたこの作品は、日射をコントロールするセラミック・シリンダーにより、透過性と室内環境の快適性を同時に実現している。1階ロビーは自由に出入りができ、外観同様に雰囲気も開放的だ。
ニューヨークタイムズビルが面する8番街を北上すると、セントラルパークのほど近くに≪ハーストタワー≫が見えてくる。総合通信企業であるハースト社の新社屋を、1928年に完成したアールデコ調の旧建物(1998年に歴史的重要建築物に指定)を基壇とし、その上にダイアグリッドの外殻構造をもつタワーが挿入されている。新旧が取り合う6層吹抜けのアトリウムには、タワースカート部分から巧みに自然光が取り込まれ、様式の異なる2つの建物がそれぞれの特徴を損なうことなく見事に調和している。
ハドソン川に面する倉庫街の中に突如として現れる≪IAC ビルディング≫は、インターネット複合企業インターアクティブのオフィスである。風になびくような形態は、イタリアのパルマスティリザ製ガラスで形成されており、これら1437枚のうち1349枚に独特のねじりを持たせている。構造はRCでフラットスラブと、外周に配置された傾斜した柱により構成されているが、内部空間は阻害されることがなく、快適なオフィス空間を創出している。 


