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高齢者向け優良賃貸住宅の課題と展望/2003.12hiroba
2003.12hiroba
高優賃とは?
高齢者向け優良賃貸住宅(以下高優賃)を略したもので、従来からなじみの深い特別優良賃貸住宅(特優賃)の高齢者版というイメージであるが、一般的にはまだ普及しているとは言い難いのが実状である。“介護問題”が日常的に話題となる中で、この高優賃は入居する高齢者が自立した“普通の暮らし”を続けていくための建築的、経済的な最小限のサポートを備えた賃貸住宅であり(介護施設ではなく)、段差解消や手すりの設置などいわゆるバリアフリー対応に加え、万一に備えて居室及びトイレ・浴室に24時間の緊急通報ボタンを設置し、国及び地方自治体(ベルデ石切の場合大阪府)が入居者の所得に応じた家賃補助を行う制度である。高齢者の負担が国や自治体の財政を圧迫する中、高齢者(満60才以上を対象)の生活不安に対し適切に配慮することで、本来双方の負担を低減するシステムであるが以外にその認識は低く、社会的な認知度も高いとは言えない。高優賃住宅の制度導入について、財政難に苦しむ地方自治体は、この継続的な個人に対する家賃補助がさらに経済状況の悪化をまねくのではないかと危惧されているようであるが、高齢者(特に一人暮らし)の多くが経済面よりもむしろ、緊急時の対応に不安を感じている比率が高いことを考慮すると施設への入居を選択されるよりは、むしろ社会的にも負担が少なく、時代に合った制度と思われる。高齢社会を支えるシステムはソフト・ハード両面における総合的な対コスト効果を長い目で捉えることが重要であり、大阪市など大都市において本制度が広く民間に活用されていないことは残念であり、今後の普及が望まれるところである。
高優賃の建設にあたって
計画においては、(建設補助が得られることもあり)立地的に生活利便施設、すなわち駅、郵便局、金融機関及び医療施設、店舗などが身近にあり、同様の住宅計画が近傍にないことが条件となるが、利便性に優れ、土地代の高い場所での計画では必然的に居住面積の縮小や家賃の高負担に反映されることを考慮すると、むしろ少し離れた場所でも高機能な生活利便施設(コンビニなど)が適切な距離にあればゆとりのある居住空間や十分な日照、通風、家庭菜園の確保など入居者側のニーズにあった住宅が供給可能であることも今後配慮されるべきであろう。また行政指導においては従来の共同住宅と同様に扱われているため、駐車、駐輪施設の整備や開発負担についての考え方など、制度の趣旨にあった対応が今後望まれるところであり、車椅子の入居者もいることや駅に近い場所に誘導されているにもかかわらず駐車駐輪義務が課せられるような矛盾は解消されるべきである。計画の際には家賃補助制度が満了(概ね20年程度)しても賃貸住宅として存続しうることが重要であるから単に立地性だけでなく入居者の立場を考えた総合的な快適性の確保を視野に入れた自立可能な計画とすることが望ましい。また、整備条件に係わる指数が市域統一に扱われていることなど今後の認可における柔軟できめ細かな対応も不可欠である。
ベルデ石きりの計画について
東大阪市西石切町に完成したベルデ石きりは高優賃制度に加え都市基盤整備公団による民営賃貸用特定分譲住宅制度(民賃)を採用し、建設及び家賃補助に固定金利と品質管理など民賃の利点を合わせた計画である。更に、21世紀都市居住緊急促進事業や環境共生住宅市街地モデル事業の補助を得て、豊かな居住空間の提供という形で利用者の生活のために公的資金を還元させている。戸数も52戸と比較的多く設定し、集合化によるコモンスペースの充実やエレベーターなどの負担低減をはかりながら、住戸タイプも1LDK、約52㎡から2LDK+納戸、約76㎡まで多様な入居者のニーズと人生の先輩である高齢者にふさわしい居住空間の確保に努めている。
管理人室には東大阪市で民間住宅に対して初めてライフサポートアドバイザー(LSA)が常勤し、夜間や休日には約300mのところに立地する介護老人保健施設「石きり」が対応する運営となっている。従来シルバーハウジングプロジェクトにおいて入居する高齢者に対して必要に応じて相談を受けたり、安否の確認等にたずさわる生活援助員であるが、今回は東大阪市の高い理解に基づき民間運営にもかかわらずLSAを導入することが可能になった。長年にわたって継続されてきた民生委員制度などとともに、今後地域のお年寄りとその家族の安心をいかに支えていくかを考える上での新しい事例となるであろう。LSAと24時間緊急通報システムの導入は、直接的に入居者の安心感につながっており、募集面でも特徴が明解になり、入居動機にもなっているようである。また一階部分に多目的ホール、談話室、テラスなどが設置され、入居者同士の良好なコミュニティの育成と生活の質的向上を図る上で役立っており、本件においては特に開業医であり、介護老人保健施設の理事長でもある事業主の理念や取り組み方方針が、重要な位置付けを占めており、入居者の健康管理、とりわけ予防医学的観点から、病気にしない、持病は適切に自己管理するなど今後の高齢社会における先進的な概念により定期健康相談や検診など本来成熟社会において基幹となるべき高齢社会への取り組みが評価、実践されることを切望している。
高優賃の入居者像と可能性
申込者の内、約60%が東大阪在住かつ周辺の町であり、子供や知人が近くに居住又は勤務地が同市にある人を加えると約90%が地元申込で占められていた。このことは今後地域単位で本制度が社会的役割と住民ニーズに応えていける可能性を示していると考えられる。申込動機が娘夫婦が近くに住んでいるからという方も多くみられた。申込者中の約5割が単身女性、夫婦が3割、単身男性が1割強と平均寿命と社会状況を反映しており、年齢的には75~79歳が最も多い割合を占めている。
従前の住まいは民間賃貸住宅の割合が37%と最も高く、次いで一戸建が27%、分譲マンション12%と、当初の企画で想定していた公営住宅家賃より少し高いくらいという企画段階で想定していたターゲットとは異なり、維持管理が大変でバリアフリーになっていない一戸建から住み替えたいという要望が多く、建築士によるバリアフリー改修や、在宅介護の普及など、今後の取り組みに大きな課題を見出すことも出来た。
募集にあたってはパンフレット作成が重要な役割を演じており、当初1000部印刷を300部増刷する結果となった。また近隣住民からの入居問合せが多数を占めていることから、現地における看板が効果的であった。一方、府の公的賃金を活用しているにも関わらず、府政だよりには掲載されず、東大阪市役所の高齢者福祉、社会福祉協議会関連施設においてPRにご助力いただいたものの期待した程の成果が得られなかったことから今後は官民の壁を越えて、相互協力を進め市民社会のニーズに応えた情報ネットワークを構築することが必要であると痛感させられた。また、入居手続きに関して公平性への配慮から高齢者にとっては資格審査書類の作成が複雑で酷な作業となっており、公募説明等にも多大な功労を要することから、今後利用者重視の立場から改ざんを検討すべきと思われた。特に、単年度制を基本とする事業計画では2,3月が竣工時期、11月頃が募集時期となりがちであり、転勤や就学など若年世代と移動ピークが重なることも考えると、年金を主体とし、移動時期は、春秋の良好な既設が望ましい高齢者の住み替えやその検討時期はその立場を考えたスケジュールを採用しつつ、年間を通じての建設、交通需要の平準化に配慮することも大切であろう。21世紀の日本は世界に類を見ない高齢化との対応が最大のテーマとなることは避けることのできない現実である。高優賃制度に限らず官民が枠組を超えて人生の収穫期とも言える高齢者の豊かな生活を、医療・行政・地域のネットワークにより構築することは社会的責務であり、諸外国も日本の対応に期待をもって注視しているといっても決して過言ではないであろう。





