ゆずり葉の歩み

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ゆずり葉の歩み

21世紀の新しい木構造への挑戦 page.2

流れ下流部休憩所◇流れ下流部休憩所
 公園をめぐるせせらぎの端部に位置する流れ下流部休憩所は、切妻のシンプルな屋根形状を連続する格子梁と、繊細な表情をもつ面格子により支えている。合い欠きの施された部位は互いに垂直に組み上げられ、込み栓が打たれている。
 この棟の構造的な特徴は、日本古来の伝統構法を採用していることである。採用している格子組や面格子は、田原建築設計事務所が提案し、平成8年度の(財)日本住宅・木材技術センター耐震補強実験で採用され、そのデータを1997年の日本建築学会大会において発表し、安全性能を検証しているものである。小断面材
 この格子組は、木と木がめり込むことにより、非常に強い耐力を発揮する。さらにフィレンデールトラスを構成している格子梁を受ける桁材は、ウェブ材を面格子で構成し、合成梁としてそのトラスを支えている。また、金属を極力用いないで構成しており、最低限のボルトやビスしか使用していないのが特徴である。格子梁には四寸角の吉野のヒノキを使用。小断面材でも、日本の伝統的な組み技を使えば、大きな空間を作ることが出来る事を示した。

流れ中流部休憩所◇流れ中流部休憩所
 せせらぎの中流部に位置する流れ中流部休憩所は、西洋の庭園にみられるガゼボをモチーフとし、八角形の平面を持つシンボリックな形態である。この棟の構造特性はなんといっても天秤構造である。
 次項の図のように、C材の梁が屋根荷重を受けてたわもうとして吊り束を押し下げ、下部材のB材の梁を下げようとすると、B梁は外部に持ち出している先端部分に、吊り束からかかる荷重の2倍以上の荷重が、B梁をRC造の柱を視点として跳ね上げようとして、B梁が釣り合う仕組みとなっている。屋根のそりは母屋束を少しずつ角度をつけてつくっている。真下からの木組み
 このような構造物は、木組みを理解していなければ作る事は出来ず、一つ一つ計算され、そこから導き出された安全性を持っている。安全性を確立しなくても、形づくることはできるかもしれないが、後で問題がでてくるだろう。本物の材料と、設計の技法により、これからまだまだ新しい木造建築が作られるだろうと感じられた。

芝生広場休憩所◇芝生広場休憩所
 芝生広場休憩所の屋根は、設置される面積のわりに、周辺からの視界の妨げにならないよう高さを低く抑えることが必要であった。立地特性として決った方向性を持たないことから、円形の平面シェルの屋根架構となっている。仕口を持たず、ホームコネクターという、内包する金物と充填された接着剤により部材を接合する方法がとられ、形態に見合った構法が選択されている。内部は屋根面を構成するシェル部材と野地板によって囲まれ、上部の7・2mの開光部により、時間とともに変化する光のステージをつくりあげている。

 

 テラス広場休憩所

◇テラス広場休憩所
 修景池を望む高台に建つテラス広場休憩所は、公園の各ゾーンの接点に位置することから、公園のシンボルとしての役割が求められた。円弧状の敷地形状に促し、伸びやかに浮かび上がる屋根は、直径60㎝の吉野産丸太柱20本により支えられている。建物は湾曲の形状をしているが、同心円ではないため、角度をだす母屋、杉柱の間隔などが全て異なり(中心から左右は同じ)、施工には技術が要されたようである。
 この棟の特長として目に付くのは、湾曲積層梁である。杉板を湾曲させ、何枚も重ねて作られた梁は、一見集成材かと思うが、ムクの板材を束ねたものである。接着剤は一切使用しておらず、ステンレスのビスで接合されており、施工時に、一番性能の悪い材料で現場実験し、破壊湾曲率をもとめ、その半分の湾曲率で構成されている。樹齢150年近くの杉丸太20本が立つ姿は、生命感に溢れ、支えるという柱の持つ役割の上に、見るものの心に力強さと安らぎを与える力をもっている。
 今回の休憩所建設には、形態も架構も違う四つの休憩所を4人の棟梁が担当した。すべての棟において非常に複雑な架構である。大工技術の低下が懸念されているが、今回のような仕事があったことで、良い技術を持った職人がまだまだ存在することが実証された。しかし、かねてから高齢化が指摘されており、今こそ心と技を伝える大切な時であることを改めて考えさせられた。新しい発想のデザイン・構造と、それを実現できる大工がいれば、今後も新たな21世紀の顔となる木造建築ができるだろう。今回のような伝統的な技法を用いながら、これまでにない木構造デザインである施設が、公共建築において創られたことは、非常に意義のあることである。

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