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インテリアとは空気をデザインすること
◇住環境が人に与える影響はとても大きい
住空間というのは偉大なもので、そこに住む人に多大な影響を与えます。気候風土が土地柄や人々の気質を形成するように、住まいの環境も、そこで生活する人間の気質に大きな影響を与えます。その事実を端的に気づかされるのは、リフォーム前後のご家族の変化です。リフォームは、住まいの環境を劇的に変化させるものですが、まるで変身でもするように、そこに住む家族の様子が180度変ってしまうのを、私は何度か目撃しました。
ある京都のお宅をリフォームした時も、そうでした。リフォーム前に打ち合わせをした時期は真冬で、京都特有の寒風がすきま風となって室内に入り込み、ご家族は縮こまるように背中をまるめて正座しています。室内を歩くと、床がギシギシと音をたてていて、なんだか気分が滅入ってきます。そこで私は、気分が一新されるような、明るく、暖かく、快適な洋間をひとつつくることを提案しました。
経年でシロアリによる被害も出ていた木造住宅でしたが、ジャッキアップして主要な部材を入れ替え、室内にはモダンなインテリアでデザインされた応接間をしつらえました。リフォーム完了後しばらくして、そのお宅におうかがいしてびっくりしました。ご家族の様子が、がらっと変っているのです。猫背気味だった姿勢は陰をひそめ、堂々と胸を張るようにソファーに腰掛けています。言葉づかいも、以前は弱々しく暗い感じだったのが、今では明るく朗らかで、力強くなっています。面白かったのは、「リフォームをして家が快適に変ったことでライフスタイルが変化し、物事に対する価値観や人生観にまで変化が起きた」とおっしゃったことです。住環境というハード的な変容は、そこに暮らす人たちのヒューマンな部分にも直接的に影響を与えることが、はっきりとわかりました。
◇インテリア計画がリフォームの良し悪しを左右する
私は学生時代、インテリアを専門に学びましたが、そこで教え込まれたのは、「インテリアとは空気をデザインすること」という基本です。室内の空気とは、わかりやすくいえば雰囲気のことです。インテリアを変えるだけで、室内の雰囲気はがらりと変ることは、みなさんもご存知だと思います。
私は建築士という肩書き以外に、インテリアプランナーやインテリアコーディネーターの資格も持っています。それぞれに中核となる仕事の領域は少しずつ違っていますが、「生活をどう築くか」というテーマにおいては、垣根はありません。建築とは、本来人間のためにあるものですから、そこに住む人の欲求に応えたものをつくるべきなのは当然です。そうした基本要件を満たした上で、なおかつデザイン的に美しい生活空間をつくりだすことが、我々の永遠のテーマです。
建築はインテリアがなければただのハコです。ですからみなさんもリフォームの時には、どんな生活を築きたいのか、できるだけ具体的にイメージをして、それをインテリアに反映させるようにしてみてください。
◇家族のライフサイクルを念頭に入れたリフォーム計画づくりを
リフォームの計画を立てる時のポイントとして重視しておきたいのは、時間的な経過を十分に考慮しておくことです。すべての物事が流転しているように、人生にはライフサイクルがあります。家族はつねに成長し、増えたり減ったりします。ですから住まいというのは、子供が生まれた、子供が独立していったといった家族のライフサイクルの節目ごとに、柔軟に変更できる空間設計、空間活用が望ましいのです。一般的には「ここは子供部屋」「ここは祖父母の部屋」というように、室内を固定的に区切ってしまうことが多いのですが、そうではなく、将来家族が増減した時に、そこに住み続ける人たちが自由に転用できる室内空間としておくことが合理的です。
最近では自治体の公共施設の多くが、将来的に建物の使用目的が変化しても、コンバージョン(変換)できるような、フレキシブルな空間設計になっています。新たに建て直すよりは室内改修だけで対処する方が、予算ははるかに合理的です。これなども、大きな意味でのリフォームの活用事例です。
リフォームで住まいをバトンタッチしていくという考え方
◇ヨーロッパ型の生活スタイルは環境にもやさしい
リフォームというと、現代的なトレンドのひとつとしてとらえられがちですが、ヨーロッパでは、伝統的な生活文化として古くから根付いています。ヨーロッパを初めて旅行すると驚かされるのは、数百年前の古い石造りの建物が、市民生活の中に普通に共存していることです。パリなどはその代表で、建物は歴史的なストックとしてそのまま受け継いでいき、室内の内装だけをリフォームして、時代に合わせて快適にしていくという暮らし方が成立しています。いわば、歴史的な必然性として、リフォームの文化が根付いているわけです。
翻って現在の日本では、「住宅は消耗品」という意識が主流ではないでしょうか。インテリアなども、古くなったり飽きたりしたら、簡単に捨てるという生活スタイルです。ヨーロッパ社会では逆に、建物も家具も、古いものほど価値があるという意識が定着しています。ですから彼らは、簡単に壊さないし、廃棄物をムダに発生させたりしません。つまり、リフォームを基本としたヨーロッパ型の生活スタイルは、ゴミをつくらないという意味でも環境にやさしい暮らし方なのです。
◇「スケルトン・インフィル」で内装だけを更新
最近では日本でも、マンションや戸建住宅などで、「スケルトン・インフィル」という思想で設計された物件が見受けられるようになりました。スケルトン・インフィルとは、建物の構造はしっかり長持ちするようにつくっておき、建物内部はあとあと自由にリフォームができるように設計しておくという考え方です。こうした住宅であれば、世代交代しても、内装だけをやり変えて暮らしの快適度を向上させつつ、家は代々引き継いでいくことができます。ヨーロッパ型の生活スタ イルを、現代の日本に置き換えた住まいづくりといえます。
日本でも、何代も続く旧家では、何百年間も住まいを引き継いでいる事例がありますが、戦後普及した都市部における一般市民層のライフスタイルは、手軽に住宅を建設し、手軽に住み替えたり、建て替えたりする、量産消費型の住宅需給でした。地球環境保護を課題とするこれからの時代に、そうした消費型の住宅供給ス タイルはやはり問題があります。
そこで見直されるのが、リフォームのメリットです。建て替えのように大量な廃棄物を出さないので、環境に大きな負荷をかけることはありませんし、リサイクル材を積極に使い、ムダがない、有害物質を出さない工法を選べば、さらに環境にやさしい建築といえます。
◇リフォームをきっかけに窓からの景色を楽しむ生活スタイルをつくる
地球環境など、大きな視点からの「環境との共生」も大切ですが、リフォームの際には、住まいの身近なところにある環境との共生も考えるようにしてはいかがでしょうか。例えば、リフォームだからこそ、家のまわりの風景を見直すという作業も、周辺環境と共生する重要なポイントです。
家の窓から見える外の景色というのは、暮らしに潤いを与える貴重な要素です。欧米では昔から、窓に映る美しい景観を「ピクチャレスク」(=まるで絵画のような美しい様子)として愛してきました。普段見慣れた風景も、窓によって切り取られると、違った一面や魅力が発見できて楽しいものです。
そこでリフォーム時には、暮らしに潤いが生まれ、四季折々の季節感が楽しめるように、窓から見える景観に、ひと工夫されてはどうでしょうか。窓枠だけでなく、カーテンなどの飾りを入れてバランスをとり、窓の景を強調するようにすればより効果的です。
都会の住宅では、プライバシーの問題などもあり、なかなか窓からの景色を楽しむゆとりはないかもしれませんが、そこは工夫次第で、季節の潤いをうまく取り込 むことができます。庭があるお宅であれば、ガーデニングや植栽で、窓から常に草花や樹木が見えるようにしておくのもひとつの方法です。外からの視線も遮りつつという条件をクリアするのであれば、ルーバーやすだれ、格子を窓の付近にしつらえるのも一案です。四季を通じて自由に豊かさを表現する楽しさを、リフォーム時にぜひ室内に取り入れてください。
新年のご挨拶
あけましておめでとうございます。
本年は一昨年からの厳しい経済環境と変革を乗り切り、皆様の多大なるご支援、ご期待のもとに設計に取り組んできたいくつかのプロジェクトが完成し、また新たなステップを切り拓くきっかけになると思われます。新しい年も、これまで通り与えられた一つ一つのプロジェクトを大切に、新たなる領域へもチャレンジしていく所存です。
活き活きとした社会の構築、美しい景観づくりのための課題は山積しています。現状に満足することなく、より質の高い生活像、教育・執務・労働環境、観光資源の開拓を求めて積極的に取り組んでいきたいと思います。
どうぞお力添えのほどよろしくお願い申し上げます。
平成22年元旦

リフォームで建築士を使うメリット
プロの知恵を上手に活用して、安心リフォーム
◇海外製のインテリアはプロにチェックしてもらおう。リフォームの打ち合わせの席で中心になるのは、たいてい奥様です。一般的なリフォームの場合、インテリアは、国産メーカーの分厚いカタログから選ぶのが普通ですが、そうするとどこにでもありがちな、似かよった部屋になってしまいます。メーカー各社が推奨するトレンド商品が選ばれる確率が高いわけですから、それは当然といえます。しかし最近では、それでは満足できない、個性的なインテリアを要望する女性が増えています。そういうこだわり派の女性の場合、とくに輸入家具や海外物のインテリアなどを要望されるケースが多く、リフォーム業者で入手できない場合は、自分で海外に直接発注して調達されるケースもあるようです。しかし、そういう場合はよくよく精査して発注しないと、日本の規格サイズではないので取り付けられない、イメージと違ってデザイン的にバランスがとれていないなど、あとで困ることがよくあります。そういう時こそ、我々のような建築士やインテリアのプロに管理してもらうのが得策です。取り付け施工面のチェックはもちろん、デザイン的におかしなことにならないか、プロならではの視点で、きっちり管理をしてもらえます。
◇カタチにはすべて意味がある。また、デザイン面でも、プロに任せるのと、そうでないのとでは、歴然とした差が出ます。女性の場合、インテリアなどについてはプロ顔負けの知識と情報量を持っている方が多く、私のようなインテリアを学んだ人間でも、驚かされることがままあります。打ち合わせの時でも、山のように積まれたインテリア雑誌を資料として持ってこられたり、インターネットで見つけたイメージ写真をたくさん持ち込む方がおられます。また、イタリアの地中海風とか、フランスの南プロバンス風といった、雑誌などで見た憧れのイメージを言葉でリクエストされる方も増えてきました。それはそれで良いのですが、自分自信の確たる嗜好やニーズなしに種々雑多なイメージだけのコラージュでいくと、結局はしばらくすると、何か安っぽい陳腐なものになってしまいます。デザインには賞味期限がありますし、流行ものはとくに、あとで見るとチープに感じるものです。模倣や上辺だけのイメージでは、せっかくリフォームをしてもあまり意味がないと思います。カタチにはすべて意味があります。この空間を使う人間にとって必要な機能や、この空間ならではの特性など、本質的な要素を整理していくと、自ずと浮かび上がってくる解答があります。そういった本質的、根源的なエッセンスをつかみとってデザインをするのがプロの仕事なのです。「美学」とは、合理的に説明がつくものです。
デザインの本質とは、工学的にも美学的にも意味があるカタチを追求することにほかなりません。ですから、しっかりしたプロにリフォームを頼めば、対価に見合ったデザインを、きちんと提案してくれるはずです。
◇バリアフリー工事もしっかりしたプロでないと不安また、バリアフリーなどのリフォームニーズも最近は増えていますが、安全性についても、専門のプロは知識が深いので安心です。よくあるのが、バリアフリー工事なのに、上辺だけの工事というリフォーム業者です。階段に手すりを取り付けるのに、石工ボードの上にボードアンカーで止めているような業者がいますが、これは論外です。しっかりした強度を確保できなくては、バリアフリーとはいえません。いい加減なリフォーム業者だと、知らぬ間にこうした欠陥工事が進んでいるので、注意が必要です。ただ、バリアフリー工事に関しては、どこまでお金をかけるのか、合理的に判断することも必要です。あまりにも多大なコストを投下するのは考えものです。もしかしたら、有料老人ホームに移る方が、いろいろな意味で得かもしれないからです。我が家で家族とともに、安心して住み続けることにどれだけの価値を見いだすのかで、自ずと許容できるコストは決まってくるはずです。ご自分のニーズはどのあたりにあるのか、個別にじっくり検討してみる必要があると思います。
『日野市多摩平の森ふれあい館』が『多摩のまちなみ建築デザイン賞日野市賞』を受賞しました




