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ゆずり葉の歩み

『建築-ゆずり葉のデザイン』/日刊建設工業新聞

book_c012003.10.17(金) 日刊建設工業新聞 

「建築へ Vers Une Architecture」

 建築家の徳岡昌克氏が、作品集『生き様のデザイン』に次いで、建築論集『建築-ゆずり葉のデザイン』を著した。「生き様」「ゆずり葉」という言葉に見られるように、優れた建築は優れた思想とそれを支える建築家の生き方と一体である、それは継承されていかなければならないという。徳岡氏を知る人は、誰もが徳岡氏の矜持の高さと謙虚さが、多くの人々に愛され、それが建築として実現していることを指摘する。『建築-ゆずり葉のデザイン』は建築哲学の書なのである。

◇建築家53年の軌跡
 徳岡氏は51年京都工業専門学校(現京都工芸繊維大学)卒業後、竹中工務店に入社。83年同社大阪本店設計副部長で退社。徳岡昌克建築設計事務所を設立する。この間、65~67年に休職してアメリカで設計実務に就く。竹中工務店に都合33年、独立して20年、合わせて53年建築をつくり続けている。今回の著書には66年の滞米中の文章から現在まで、建築家としての全生涯の軌跡が収められている。寄贈者から約100通の感想文がきたことに触れる。
 「贔屓目に見ても、これほどいただいてうれしい。どちらかというと建築家でない人の方が多い。読むにしたがって、言わんとすることが分かってきたという。街づくりをどうすればいいか心配しているが、実際には良く分からない。そうした時に本という形なので、言っていることが深く浸透したのだと思う。これを契機に、建築のことや自分たちの街への理解が広がってほしい」
「アメリカに行ったのは35~36歳の時で、書いたのは現象だけでなく文明論であって本質的なことは今も変わっていない。それが新鮮だといってくれた人もいる。アメリカ人は今も国家に対して忠誠心があり個人として行動している。個人の自覚や見識をしっかりもてば、より優しくなれるという意味が理解できる。そうしたことを建築を通して、文明論として書いた」e5bbbae8a8ade5b7a5e6a5ade696b0e8819e200310

◇美しい街づくりを
「若い人にも読んでほしいが、いまのところ反応が少ない。日本の現状をどうするか。ただ国にすがるのではなく、自分たちでどうするかを考えてほしいからである。それには個人の自覚や見識、生き方がとても大事になってくる。そのことは子供たちや孫たちへとつながっていくことでもある。次の世代に何を残すか。建築で言えば優れた建築をいかに残すかだが、その残し方を考えざるを得ない。つくる時に個々人がもっと訓練し勉強することである」
「日本の現状は全体ビジョンがないため、取り返しのつかない方向に向かっているような感じがする。40年前、こうならなければいいがという方向へきている。文化やテイストを破壊し続けている。建築家もそれらに無関心であっていいはずはない。手を出せば水が出る、という認識では建築はつくれない。建築は総合化だから、ものをつくりあげていく過程の力が大事なのである」
「建築はその建築家が死んでも残っていく。あとは誰が使うのか。長いスパンで建築を考えなくてはならないとだめである。一粒の種がいい方向に発育し別のところで開花していくように、いい街づくりも同じである。それにはどういった環境をつくるのかを、アピールできるかどうかにかかっている」

◇錯綜する現在に方向性を示す
『建築-ゆずり葉のデザイン』は「アメリカで得たもの」「建築とはなにか」「いい街づくりを」「自作について」「エッセイ」で構成されている。いずれも単なる建築論ではない。建築を通して哲学を語っている。徳岡氏の建築は、その哲学が実現されている。景観賞など受賞作品が多い。そこに住む人たちが、どう生活すればいいのかを提案し続けているからである。建築づくりとは何か、建築家とは何か。錯綜する現在にあって、改めてそのことを考えさせてくれる。

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