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建築士と建築士会がなすべきこと―No.1

2010.3建築人2010.3 建築人  No.549 建築士の行方 ―これからの課題と展望―
「建築士と建築士会がなすべきこと」

◇低成長・縮小経済に生きる知恵
 前世代も含めて現代の日本を生きる我々は、右肩上がりの経済状況しか知らない。低成長ならまだしも縮小経済に対処する経験がない、というよりそれに対する想像力、創造力が欠如しているのが問題で、さらに悪いことに世界の現代史や政治経済に関する学習が不足していて近未来への回答を見出せないようだ。不況という言葉を数年来、毎日のように耳にしてきたが、そのうち好況になると考えるのは空虚な幻想であり、国力を考えればこんなものではないかと思えてならない。わが国の建設業界は一部企業を除き、高度経済成長と戦争特需をはじめとする輸出による貿易黒字の恩恵を国内で享受し、甘やかされて育ってきたが、大きな過渡期を迎えている。その主因は少子高齢化にともなう社会的な老化にある。人間の高齢化の性状は、右肩下がりに回復と停滞の波を描きながら身体能力が徐々に低下し死を迎える。沈滞する日本社会も同じように波を描きながら好不況に一喜一優するが、遠めで見るとはっきりと、成熟ではなく老いと衰弱に向かっているのが判る。しかし一国が社会的に老化しても地球全体で見ると局地的現象に過ぎず、島国日本が国際状況を体現しているわけではなく、確かなことは資源と食料を自給できない国が、豊かなはずは無いということだ。マスコミの論調は、他国を批判することで国内的に精神的安定をかろうじて保っているようにも感じられる。

◇建築界の混迷の主因
 わが国における建築士の平均年齢はほぼ60歳に達しており、情報化社会における実務の第一線で働く30から40歳代は35%に過ぎない。しかも失われた10数年といわれる環境の中、若手世代には実績が少なく、短時間で完結させる能力や責任感が充分に身についていない。一方大半を占める50歳以上の建築士は、利権を確保して生活を守るために、建築士の新規登録を絞り、設計者選定も実績重視とし、国が借金までして見通しのない将来の仕事までやり尽くしてきた。情報公開もプロポーザルもすべて経験年数や実績が重視されていて、コンペはほとんど無く、少数派の若い世代にとって希望を見出せない状況となっている。建築士だけでなく会計士など他の資格も同様に労働人口バランスに偏りがあり、資格取得に関する世代間不公平は著しい。新しい領域を切り開くには若い力が不可欠なのだが、この既得権社会と自己中心的な利益誘導、そして自己浄化力のない業界体質が、建築の魅力や誇りを傷つけ、多くの優秀な人材が他業界、他国へと追いやり、生産能力を低下させた。また経験と技術によって業界の基盤を支えてきた職人たちも高齢化し、もはや余力はわずかとなっている。将来を考え優れた人材を活かすために、公正公平な視点を持って均衡の取れた人材育成と新陳代謝を進めることが不可欠である。
徳岡浩二

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