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『ネクスタウン鶴見東』が「新建築」に掲載されました。
新建築2001.7
ネクスタウン鶴見東
大阪市住宅供給公社による定期借地権付民間分譲住宅として、2街区約400mにわたるまちなみを、効率優先ではなく社会性と活性化に重点をおいて計画した。10~13戸の住宅をコミュニティの1単位として全体を8つのブロックにわけ、各住居を玄関がある2階レベルの空中廊下でネットワークしている。安全で快適な歩行空間を提供するため、車の進入口を限定して歩道分断を極力避け、まちへの配慮とした。中高層住宅が連続する周辺環境に対し、特徴ある敷地の魅力を引き出しながら、ヒューマンスケールで歩いていて楽しい、生活シーンの背景としての建築を目指した。各住戸は1,2階共に出入り口があることで、ニーズに応えた豊富なプランニングバリエーションが可能となっており、半私的な共用空間である空中廊下や中庭、個性のある生活シーンに彩られたテラスやバルコニーなどの半外部空間と共に有機的に構成され、住環境に視覚的変化と奥行感をもたらしている。
大地と接し、空に開いている戸建住宅の自由さを集合住宅に活かしつつ集まって住むことに意味をもたせたい。3層厚生の住戸である本計画では上下階に他人が住むことはなく、駐車スペースやテラス、居室などで連続された各住戸の共有する躯体部分は比較的少ない。部分的増改築が可能なように共有壁を2重とする案も検討されたが、必要性や経済性を総合的に考慮して現案に至った。また、外観は連続バルコニーがないため、住戸間の隔て板が連続し、横ラインが強調された画一的なデザインから開放されている。この空間構成はまちと建築づくりの両面におけるマンションと戸建住宅の共生への挑戦である。
21世紀の新しい木構造への挑戦 page.2
◇流れ下流部休憩所
公園をめぐるせせらぎの端部に位置する流れ下流部休憩所は、切妻のシンプルな屋根形状を連続する格子梁と、繊細な表情をもつ面格子により支えている。合い欠きの施された部位は互いに垂直に組み上げられ、込み栓が打たれている。
この棟の構造的な特徴は、日本古来の伝統構法を採用していることである。採用している格子組や面格子は、田原建築設計事務所が提案し、平成8年度の(財)日本住宅・木材技術センター耐震補強実験で採用され、そのデータを1997年の日本建築学会大会において発表し、安全性能を検証しているものである。
この格子組は、木と木がめり込むことにより、非常に強い耐力を発揮する。さらにフィレンデールトラスを構成している格子梁を受ける桁材は、ウェブ材を面格子で構成し、合成梁としてそのトラスを支えている。また、金属を極力用いないで構成しており、最低限のボルトやビスしか使用していないのが特徴である。格子梁には四寸角の吉野のヒノキを使用。小断面材でも、日本の伝統的な組み技を使えば、大きな空間を作ることが出来る事を示した。
◇流れ中流部休憩所
せせらぎの中流部に位置する流れ中流部休憩所は、西洋の庭園にみられるガゼボをモチーフとし、八角形の平面を持つシンボリックな形態である。この棟の構造特性はなんといっても天秤構造である。
次項の図のように、C材の梁が屋根荷重を受けてたわもうとして吊り束を押し下げ、下部材のB材の梁を下げようとすると、B梁は外部に持ち出している先端部分に、吊り束からかかる荷重の2倍以上の荷重が、B梁をRC造の柱を視点として跳ね上げようとして、B梁が釣り合う仕組みとなっている。屋根のそりは母屋束を少しずつ角度をつけてつくっている。
このような構造物は、木組みを理解していなければ作る事は出来ず、一つ一つ計算され、そこから導き出された安全性を持っている。安全性を確立しなくても、形づくることはできるかもしれないが、後で問題がでてくるだろう。本物の材料と、設計の技法により、これからまだまだ新しい木造建築が作られるだろうと感じられた。
◇芝生広場休憩所
芝生広場休憩所の屋根は、設置される面積のわりに、周辺からの視界の妨げにならないよう高さを低く抑えることが必要であった。立地特性として決った方向性を持たないことから、円形の平面シェルの屋根架構となっている。仕口を持たず、ホームコネクターという、内包する金物と充填された接着剤により部材を接合する方法がとられ、形態に見合った構法が選択されている。内部は屋根面を構成するシェル部材と野地板によって囲まれ、上部の7・2mの開光部により、時間とともに変化する光のステージをつくりあげている。

◇テラス広場休憩所
修景池を望む高台に建つテラス広場休憩所は、公園の各ゾーンの接点に位置することから、公園のシンボルとしての役割が求められた。円弧状の敷地形状に促し、伸びやかに浮かび上がる屋根は、直径60㎝の吉野産丸太柱20本により支えられている。建物は湾曲の形状をしているが、同心円ではないため、角度をだす母屋、杉柱の間隔などが全て異なり(中心から左右は同じ)、施工には技術が要されたようである。
この棟の特長として目に付くのは、湾曲積層梁である。杉板を湾曲させ、何枚も重ねて作られた梁は、一見集成材かと思うが、ムクの板材を束ねたものである。接着剤は一切使用しておらず、ステンレスのビスで接合されており、施工時に、一番性能の悪い材料で現場実験し、破壊湾曲率をもとめ、その半分の湾曲率で構成されている。樹齢150年近くの杉丸太20本が立つ姿は、生命感に溢れ、支えるという柱の持つ役割の上に、見るものの心に力強さと安らぎを与える力をもっている。
今回の休憩所建設には、形態も架構も違う四つの休憩所を4人の棟梁が担当した。すべての棟において非常に複雑な架構である。大工技術の低下が懸念されているが、今回のような仕事があったことで、良い技術を持った職人がまだまだ存在することが実証された。しかし、かねてから高齢化が指摘されており、今こそ心と技を伝える大切な時であることを改めて考えさせられた。新しい発想のデザイン・構造と、それを実現できる大工がいれば、今後も新たな21世紀の顔となる木造建築ができるだろう。今回のような伝統的な技法を用いながら、これまでにない木構造デザインである施設が、公共建築において創られたことは、非常に意義のあることである。
21世紀の新しい木構造への挑戦 page.1
2001.5 「木のこころ」 ~21世紀の新しい木構造への挑戦~
『本物を伝える 山田池公園施設』
大阪府枚方市にある山田池公園は、枚方八景のひとつに数えられる山田池と周囲の豊かな自然を活かし、自然とのふれあいをテーマとした公園である。現在、数年後のオープンを目指して、公園に隣接する南側の約30haの敷地に、新たに5つの特長あるゾーンを備えた公園を整備しており、全体の構想として5つの休憩所が計画され、現在そのうちの4つの休憩所の工事が進められている。
この休憩所は日本の伝統木造技術で構成されており、今までの木造建築では考えられなかったデザインを提案し、実践したものである。日本でも類がないと思われる「進化した木造伝統工法」であり、木の組み合わせ技術の発展が明治以降停滞している下で、組み技をより進化させた木構造を採用したもので、木構造デザインの挑戦でもある。構造的な概念を説明すると、日本古来の木造建築技術(木の組み合わせによる「合い欠き」「貫」「渡りあご」「面格子」等)を現代工学において解析し、安全性能を担保している。
日本の伝統木造技術の構造特性を説明するならば、木と木を組み合わせ、お互いが対等の強度性状となり、相互にのめり込み合うことにより、粘りを発揮させることである。このことを十分理解していないと、一方が強くて一方が弱くなり、弱い方が急激な破壊を起こす場合がある。前記の長所を構造的表現で説明するならば、木材の横圧縮(めり込み)の降伏開始点を、その他(圧縮・せん断・曲げ等)の各降伏開始点よりも早く起こさせ、めり込みによる粘りのある破壊形式を引き起こさせる事である。これは欧米の力には力で抵抗するという構造特性の原点とも言えるトラス構造のように、限界耐力を上回る力には急激な破壊(脆弱破壊)が起きやすいシステムよりも自然体で、力を自分が破壊することによって受け流そうという日本古来の大工の考えであったと思われる。
よく木構造を理解していない設計者や技術者が、数値計算(参考書を片手にした構造計算)だけで各伏図、軸組図と図面リスト、架構図を製作し、現場に一度も行かずに出来上がり、後日思わぬ不具合が発生したり、施工中に大工より「こんな図面通り刻まれへんで」とか「こんな使い方しないぞ」などと言われたりして、結局のところ「木のことはあまり知らないのでまかすよ」となるのが現在の一般的な状況ではないだろうか。
オープンはまだ先で、一般の人はまだ利用することはできないが、休憩所はそろそろ姿を現してきて、それがとても魅力的であったため、一足早く取材をさせてもらった。
◇休憩所設計にあたっての考え
休憩所の設計にあたっては、公園を利用する市民、特に子供達に本物の木の魅力と木造建築を見せることと、海外の単なる模倣ではない日本らしい特徴を持たせることを基本理念としている。公園の環境を構成する要素には材料の選択から構造デザインにいたるまでの素材感を大切にした。また、新しい公園の指針である「五感を通して自然と楽しく触れ合える環境づくり」に応えられるよう、感性に響くものづくりを行っている。本来、西欧の概念である公園にも、その場所らしい個性を表現したいとして形態を西洋的なものとしながらも、日本的な意識を内包させることで、風土になじむ建築とすることを意図している。そこで、今回休憩所の建設にあたっては、木という素材と、伝統的な木組みが採用されることとなった。
自然の持つ力を建築へと昇華させる過程において、素材のひとつひとつを見極めながら木のこころを活かして適材適所に配置し、それらを構成していくなかで、自然に順応するように配慮している。その点において木構造は、素材レベル、部位レベル、架構レベルにおいてそれぞれ魅力があり、基本理念を実現するものとして適切な構法である。
生命感のある木材が、日本古来より護り育てられてきた匠の知恵と技術により、ひとつの架構へと組み上げられるさまは、様々な表情を醸し出し、いのちを育んできた一本一本の木が場所を変え、かつての森を象徴するかのように感じさせている。
<次につづく>
『大原町の家』が『hiroba』に掲載されました
大原町の家 / 2000.1 hiroba
洋風スタイルの家に住み、東京や海外など多方面で業務を手がける建築主の要望は、真にくつろぐことのできる日本的な良さを生かした住まいであった。両親と共に若き日を過ごした旧家(母屋)が解体されることになったため、懐かしいシーンを新しい住まいに再生し、味わいのある住環境を創出することがテーマとなった。時がもたらした美を、新たな材料と空間に共生させ、貴重な材料を後世に伝承するため、旧家屋の部材を幾度となく実測、記録して設計に盛り込み、完成まで建築主と共に試行錯誤を繰り返しながら、設計管理に努めた。
慣れ親しんだ形態や風合いを生かすため、新材は自然塗料(柿渋・ヤシャ等)により色合わせ(エイジング)し、珪藻土くし引き仕上げの土壁を採用して人体に優しい室内環境創りにも気を配っている。
吟味の上採用された愛着のある貴重な材料を一代限りで廃棄することへの抵抗を、再生コスト、意匠性など、総合的な価値観にもとづいて表現することを大切にした。
外観は、軒先を押さえた簡素な切妻瓦屋根の構成とし、ガレージ上屋や軒樋は硫化銅の落ち着いた色調としている。
新生活を始められた建築主の「もう10年もここに住んでいる様です」という言葉に目的の一つが達成された様に思われた。
『平野区役所加美出張所』が「hiroba」に掲載されました
平野区役所加美出張所
平野区は大阪市東南部に位置し、古い歴史と文化遺産に恵まれた地として、新旧が混在する奥行きのあるまちなみが魅力を醸し出しています。戦国時代には町の安全と自治を守るため集落のまわりに二重の堀をめぐらせた「環濠自治都市・平野郷」が形成され、近世においては河内木綿の集積地として発展し、江戸期に完成した碁盤目状の町割りや、江戸の中頃よりはじめられた夏祭りなど伝統行事の数々が住民生活の中に定着し、大都市の中にあっても今なお歴史が息づく風土と景観を残しています。
平野区役所加美出張所は、まちの顔として交差点に位置し、情報拠点としてのメッセージ性の高いシンボリックな庁舎機能と、住民のまちづくり活動の交流拠点としての集会機能を併設しています。
設計に当たり、地域の歴史性を建築空間として具現化し、抽象的に表現するモノトーンの端正な構成により私たちの感性の奥に秘そむ新しい和風デザインを目指しました。
内部は木のぬくもりを生かし愛着と郷愁を感じさせる格子や木製サインを採用して誰にでも親しみやすく分かりやすい計画を心がけました。





