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建築士と建築士会がなすべきこと―No.2
2010.3 建築人 No.549 建築士の行方 ―これからの課題と展望―
「建築士と建築士会がなすべきこと」
◇都市づくりのビジョンを導く規制緩和
建築を永く使い続けることは大切だが、日本中を埋め尽くしている多くの建物は、規格化や分業化で作られた大量生産によるものがほとんどであり、これらの資産が文化的にも芸術的にも後世に引き継いでいくべき、優れた価値を有しているといえるだろうか。建築士に、これではいけないという気概が感じられず、理想を目指して創造的に取り組む姿勢や、こんな都市を創りたいというビジョンを示そうともしないのが残念だ。戦後、既得権社会で分捕り合戦を経て繰り返し配分されてきた糧も年々先細っている。国勢維持が可能な残り数年間が、目を覚ますべきラストチャンスではないかと思う。
建築士は、開発と更新がなければ持続的に技術力を維持してはいけない。建築を改修して使い続けることは重要だが、それだけでは人も技術も育たない。せっかく構造が見直されたのだから意匠・設備も早急に意識改革し、継続的に時代遅れの建物を芸術性・文化性が高く長寿命で環境負荷の少ない社会資産として更新していくことが必要であり、遅くなるほど解体廃棄にかかる負担も大きくなるであろう。沈滞する経済を打開するためには我国の特徴を活かす知恵が必要である。車社会の新興国に比較して我国は、都市基盤が整備されていて効率が良く、移動コストや環境負荷が少ないわりに容積率は低い。省エネ・省資源の取り組みによって余力も生まれていることから、交通利便性の高い都市部の容積率を大幅に見直して高度利用を促し、芸術・文化を動機とした社会ストックの更新を進める一方、団地再生を促し、郊外は自然と共生できる田園風景を回復させて、メリハリのある土地利用により美しい景観を誘導しながら活性化させることが可能である。国際競争力強化のためにも都市モビリティを考慮した開発は不可欠であり、規制強化の一方に緩和が無ければ経済が失速するのは当然である。容積緩和は再開発特区や総合設計制度の拡充でも対応できる。さらに省エネ建築や、文化・福祉施設に対するインセンティブを与えるなど現行法規の中でも実現可能な方策は見出せるはずである。
◇将来を担う良き遺伝子を残す使命
建築設計とは本来、未来を描く想像的な仕事であり、過去の事例を参照して繰り返すことは縮小再生産を招く自殺行為であるのに、高度成長時代の遺物として建築界の常道となってしまったことが発展を大いに妨げてきた。この世に生を受けたものが良き遺伝子を後世に残していくことは使命であり、それは建築も同じである。官民一体となって「公の利益」を考え、質の高い建築・都市を創るために相応しい方策を実現することが重要である。建築士制度も社会状況に応じて身の丈にあった整備をする必要があり、1級、2級建築士の一元化と木造建築の再評価、資格創設に伴う救済措置の役割を終えた木造建築士の段階的廃止、各団体のCPD制度の共通化、資格試験・登録事務の効率化、業界団体の機能的統合、賠償保健への強制加入など、他人任せではなく建築士自らが提案していかねばならない。また行政も時代にふさわしい建築関連法規の再構築するため、阪神大震災の教訓を活かし、構造計算偽装事件の抜本的再発防止策に着手し、税による良質な建築生産の誘導、実状にあった用途地域の見直し、市街化調整区域における国土利用方針の明確化、減築・再築時代に合わない抑制的な開発許可申請の簡略化、都市計画道路の迅速な整備、指名願いなど登録事務の合理化などに「時は金なり」という感覚を持って積極的に取り組んでいただきたい。建築界にとって中国の10倍以上といわれる高コスト体質も大きな課題である。競争力のある生産性を維持するため、企画から許認可、設計監理、資材調達から施工までを含めた総合コストの視点を持って縮減することが重要である。憲法を含め法律を運用で済ませるのはもはや限界であり、システムの改善が不可欠である。変革に向けて国依存、景気まかせでない自律的回復への道筋を、複合的、総合的に見出して未来を切り拓いていかねばならない。

新年のご挨拶
あけましておめでとうございます。
本年は一昨年からの厳しい経済環境と変革を乗り切り、皆様の多大なるご支援、ご期待のもとに設計に取り組んできたいくつかのプロジェクトが完成し、また新たなステップを切り拓くきっかけになると思われます。新しい年も、これまで通り与えられた一つ一つのプロジェクトを大切に、新たなる領域へもチャレンジしていく所存です。
活き活きとした社会の構築、美しい景観づくりのための課題は山積しています。現状に満足することなく、より質の高い生活像、教育・執務・労働環境、観光資源の開拓を求めて積極的に取り組んでいきたいと思います。
どうぞお力添えのほどよろしくお願い申し上げます。
平成22年元旦

『玉川学園幼稚園』が『建築と社会』に掲載されました

玉川学園幼稚園 大阪府
2009.11建築と社会 第16回会員作品特集”私の空間作法” / 藤城義丈
800人の園児を持つ幼稚園に於ける、西側公園の緑と東側運動場の桜が一体となり連なるような、開放性をもったホールづくりである。専門的な体操設備とコーチ陣を配する体育施設として、また発表や講演、式典といった園児をはじめ、先生方、父兄にとっても多様な利用を可能とするため、さや屋根やLow-eペアガラス等を利用しながら快適な大空間を実現している。
子供たちは毎日の活動を通じて桜、新緑、紅葉、落葉といった季節の変化を感じながら成長している。
『九州大学(伊都)総合学習プラザ』が竣工しました
九州大学(伊都)総合学習プラザ 所在地 : 福岡市西区
コンセプト
九州大学の移転に伴い、伊都新キャンパスの工学系地区の中心に整備される全学共通の講義室と新学部の教育研究施設を備えた施設。大規模会議にも対応できる講義室を有し、工学系地区の顔となることが期待されています。周辺の歩行者専用ルートや周辺の緑地とのつながりを持たせるため、どの方位からでもアクセスできる中庭を講義室が囲む配置とし、利用者相互の交流が図れる計画としました。九州大学のデザインマニュアルに倣い、外壁の一部を周辺の建物と合わせたタイル張りとすることにより「歴史」・「伝統」を感じさせるデザインとする一方で、工学系地区の中心に位置する施設として、外周部に配した廊下・階段をガラスで覆うことで利用者のアクティビティを外部に表出させ、場所の印象を強調することを意図しています。
ニューヨークにおける環境デザイン
建築人 No.544 2009.10
ニューヨークにおける環境デザイン / 海部 哲
今春ニューヨークを訪れた。マンハッタンには、様々な時代を代表する建築が競い合うように混在しているが、最新のプロジェクトについて感想も含め報告したい。
エンパイアステートビルから眺めるミッドタウンの夜景に、ひときわ輝きを見せるのは≪ニューヨークタイムズビル≫である。2000年にコンペで選ばれたこの作品は、日射をコントロールするセラミック・シリンダーにより、透過性と室内環境の快適性を同時に実現している。1階ロビーは自由に出入りができ、外観同様に雰囲気も開放的だ。
ニューヨークタイムズビルが面する8番街を北上すると、セントラルパークのほど近くに≪ハーストタワー≫が見えてくる。総合通信企業であるハースト社の新社屋を、1928年に完成したアールデコ調の旧建物(1998年に歴史的重要建築物に指定)を基壇とし、その上にダイアグリッドの外殻構造をもつタワーが挿入されている。新旧が取り合う6層吹抜けのアトリウムには、タワースカート部分から巧みに自然光が取り込まれ、様式の異なる2つの建物がそれぞれの特徴を損なうことなく見事に調和している。
ハドソン川に面する倉庫街の中に突如として現れる≪IAC ビルディング≫は、インターネット複合企業インターアクティブのオフィスである。風になびくような形態は、イタリアのパルマスティリザ製ガラスで形成されており、これら1437枚のうち1349枚に独特のねじりを持たせている。構造はRCでフラットスラブと、外周に配置された傾斜した柱により構成されているが、内部空間は阻害されることがなく、快適なオフィス空間を創出している。 




